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藤田のぼるの「童話作家のアイウエオ」【ハ】はやみねかおるさん
『そして五人がいなくなる』講談社青い鳥文庫 はやみねかおる/作 村田四郎/絵
 

◇藤田のぼる(ふじた のぼる)-profile-
1950年秋田県生まれ。児童文学評論家・作家。日本児童文学者協会副理事長。 聖学院大学他講師。著書に『児童文学への3つの質問』(てらいんく)、『少年少女の 名作案内 日本の文学』(共編、自由国民社)『「場所」から読み解く世界児童文学事典』 (共編著、原書房)など、創作作品に『山本先生新聞です』(岩崎書店)、『錨を上げて』(文 溪堂)『みんなの家出』(福音館書店、2014年度産経児童出版文化賞フジテレビ賞) などがある。小学校国語教科書編集委員、NHK学校放送企画委員なども務める。

【ハ】はやみねかおるさん『そして五人がいなくなる』講談社青い鳥文庫 はやみねかおる/作 村田四郎/絵

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 「はやみねかおる」という名前を聞いて「なつかしい!」と思えるのは、概ね三十代以下の人たちになるでしょうか。デビュー作の「名探偵夢水清志郎事件ノート」シリーズの第一作『そして五人がいなくなる』が出版されたのが一九九四年ですから、この時十歳だった読者は、今三十六歳ということになります。講談社・青い鳥文庫の一冊として出されたわけですが、それまでは「文庫」というのは単行本として出されたもののリメイクというイメージが強かったのですが、このシリーズと、翌年にスタートした松原秀行の「パスワード探偵団」シリーズの成功で、今に続く文庫書下ろしというのが一気に主流になった感じです。
 さて、主人公は「名探偵」を名乗る夢水清志郎ですが、隣の岩崎家の三姉妹、特に語り手でもある亜衣が主人公といってもいいくらいの存在感があります。この亜衣・真衣・美衣の三姉妹は三つ子でとても似ていて、見分られるのは母親くらい。ところが、岩崎家の隣に越してきた、いささか怪しい風体の自称名探偵は一発で三人の違いを見抜き、亜衣たちの信用を獲得します。今回シリーズの何冊かを読み返してみて、このシリーズの魅力が、江戸川乱歩の「少年探偵団」と重なることを再認識しました。三姉妹は時に名探偵の助手的な立場にもなり、そこは小林少年を始めとする探偵団の少年たちを連想させます。なにより「亡霊は夜歩く」「踊る夜光怪人」といったタイトルが、このシリーズが「少年探偵団」のDNAをしっかり受け継いでいることを物語っています。但し、夢水清志郎は明智探偵とは違ってかなりうさんくさいところもあり、そうした頼りなさと事件を解決する探偵としての手腕のギャップが、むしろ魅力といえるでしょうか。
 このシリーズが出てまもない頃、作者が現役の小学校の先生であることにちょっと驚きました。先生出身の児童文学作家はたくさんいますが、このシリーズからはそういう「先生臭さ」を感じなかったからです。はやみねさんは巻末の著者紹介に「クラスの本ぎらいの子どもたちを夢中にさせる本をさがすうちに、みずから書き始める」と書いていますが、これは結構本音だったかも知れません。
 二〇〇八年に出された『ぼくらの先生!』は、定年まで勤めあげた先生が、それから十年して奥さんに教員時代の思い出を語るという設定の連作ミステリーですが、この先生の設定自体、実際には三十代後半で教員を辞した作者の「もう一人の自分」という雰囲気もあって、はやみねさんにとって若き日の教員時代がかけがえのない時間であったことを、改めて感じさせてくれました。

◇藤田のぼる(ふじた のぼる)-profile-
1950年秋田県生まれ。児童文学評論家・作家。日本児童文学者協会副理事長。 聖学院大学他講師。著書に『児童文学への3つの質問』(てらいんく)、『少年少女の 名作案内 日本の文学』(共編、自由国民社)『「場所」から読み解く世界児童文学事典』 (共編著、原書房)など、創作作品に『山本先生新聞です』(岩崎書店)、『錨を上げて』(文 溪堂)『みんなの家出』(福音館書店、2014年度産経児童出版文化賞フジテレビ賞) などがある。小学校国語教科書編集委員、NHK学校放送企画委員なども務める。