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藤田のぼるの「童話作家のアイウエオ」【ム】村山早紀さん
『コンビニたそがれ堂』ポプラ文庫ピュアフル刊 村山早紀/著 こより/絵
 

◇藤田のぼる(ふじた のぼる)-profile-
1950年秋田県生まれ。児童文学評論家・作家。日本児童文学者協会 理事長。 著書に『児童文学への3つの質問』(てらいんく)、『少年少女の 名作案内 日本の文学』(共編、自由国民社)『「場所」から読み解く世界児童文学事典』 (共編著、原書房)など、創作作品に『山本先生新聞です』(岩崎書店)、『錨を上げて』(文 溪堂)『みんなの家出』(福音館書店、2014年度産経児童出版文化賞フジテレビ賞) などがある。小学校国語教科書編集委員なども務める。

「ム」村山早紀さん『コンビニたそがれ堂』ポプラ文庫ピュアフル刊 村山早紀/著 こより/絵

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 村山早紀さんの作家としての歩みを振り返ると、僕には三段跳びのようなイメージになっています。最初のホップが『ちいさいえりちゃん』、二番目のステップが「シェーラ姫のぼうけん」、そして三つめのジャンプが「コンビニたそがれ堂」です。
 デビュー作の『ちいさいえりちゃん』は椋鳩十児童文学賞を受賞していますが、この賞は新人の第一作が対象というユニークな賞でした。パパやママ、そして何よりまりこねえちゃんからいつも「ちいさいえりちゃん」と呼ばれるのが嫌で、どうやったら自分も「おねえちゃん」と呼ばれるようになるかと考えます。といってもリアリズム的作品ではなくて、おおかみに言われておねえちゃんを食べちゃったり(そうすれば自分がおねえちゃんになれるから)といった、痛快メルヘンとでもいった味わいの作品でした。幼年文学のすぐれた書き手というのは希少価値があるので、これは楽しみな新人が現れたと思いました。
 しかし(というのも変ですが)、村山さんが書きたかったのは長編のファンタジーだったようで、『ちいさいえりちゃん』の四年後、フォア文庫で「シェーラ姫のぼうけん」シリーズをスタートさせます。フォア文庫というのは、岩崎書店など四社が共同して立ち上げたレーベルですが、当初は単行本としてある程度評価されたものを文庫化するというパターンでした。これが九〇年代あたりから「文庫書下ろし」が多くなり、九七年にスタートした「シェーラひめのぼうけん」は、その代表例といえます。しかも、多くのシリーズが一冊ごとの読み切りだったのに対して、十巻が文字通り続き物という点でも画期的でした。母国の人びとを魔術によって石に変えられてしまったシェーラ姫が、やや頼りない幼馴染みの魔法使いファリードと泥棒だったハイルを相棒に、魔法を解くための七つの宝石を手に入れる旅に出るという、ファンタジーとして王道のストーリーでした。
 そして、このシリーズの完結から四年後(シェーラ姫の双子の娘たちが活躍する「新シェーラひめのぼうけん」シリーズはまだ続いていましたが)、『コンビニたそがれ堂 街かどの魔法の時間』がポプラ社から刊行されます。そして、二年後にこれが同社のジャイブピュアフル文庫として改めて出され、今に続く「コンビニたそがれ堂」シリーズが本格的にスタートします。こちらの文庫は新書版の児童文庫ではなくて、文字通りの文庫本、YAから大人の読者も意識した作りでした。これは、都市伝説のような、本当にあるのかどうかという不思議なコンビニに出会った人たちの物語で、大人のメルヘンといった趣を持っています。こうしてみると、村山さんは作家としての戦略を明確に持って、自身の作品世界を広げてきたように思います。

◇藤田のぼる(ふじた のぼる)-profile-
1950年秋田県生まれ。児童文学評論家・作家。日本児童文学者協会 理事長。 著書に『児童文学への3つの質問』(てらいんく)、『少年少女の 名作案内 日本の文学』(共編、自由国民社)『「場所」から読み解く世界児童文学事典』 (共編著、原書房)など、創作作品に『山本先生新聞です』(岩崎書店)、『錨を上げて』(文 溪堂)『みんなの家出』(福音館書店、2014年度産経児童出版文化賞フジテレビ賞) などがある。小学校国語教科書編集委員なども務める。