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藤田のぼるの「童話作家のアイウエオ」【ナ】那須正幹さん
『ズッコケ三人組ファイナル』ポプラ社刊 石井直人・宮川健郎/
 

◇藤田のぼる(ふじた のぼる)-profile-
1950年秋田県生まれ。児童文学評論家・作家。日本児童文学者協会副理事長。 聖学院大学他講師。著書に『児童文学への3つの質問』(てらいんく)、『少年少女の 名作案内 日本の文学』(共編、自由国民社)『「場所」から読み解く世界児童文学事典』 (共編著、原書房)など、創作作品に『山本先生新聞です』(岩崎書店)、『錨を上げて』(文 溪堂)『みんなの家出』(福音館書店、2014年度産経児童出版文化賞フジテレビ賞) などがある。小学校国語教科書編集委員、NHK学校放送企画委員なども務める。

「ナ」那須正幹さん『ズッコケ三人組ファイナル』ポプラ社刊 石井直人・宮川健郎/

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 今回ご紹介する那須正幹さんは、言わずと知れた「ズッコケ三人組」の作者ですが、このシリーズの人気度が強すぎて、「那須さんといえばズッコケ」という感じになっているのは、逆に残念。実に幅広い作品を出されています。とはいえ、まずは「ズッコケ三人組」について、おさらいをしておきましょう。
 シリーズ第一作『それいけズッコケ三人組』が出たのは一九七八年、七九年に出た第二作をはさみ、八〇年からは年二冊の刊行というペースが定まり、これが〇四年まで二十四年間続けられました。ちょうど五十巻に達したわけです。児童書としては空前絶後のシリーズでした。 「三人組」とは、小学校六年生のハカセ、ハチベエ、モーちゃんの三人で、妙に知識はあるが実行力の伴わないハカセ、実行力だけはあるハチベエ、体はでかいがおっとり型のモーちゃんの組み合わせが絶妙です。全体的には日常系の物語が多いのですが、『ズッコケ時間漂流記』のようなファンタジーもあれば、『うわさのズッコケ株式会社』のような社会性の強い作品もあり、まさに子ども読者の手が届きそうな、夢と冒険なんでもありの世界でした。これらについては、『ズッコケ三人組の大研究』という分厚い本が三冊も出ているので、ご覧になってください。
 更にわたしたちを驚かせたのは、シリーズ終了の一年後、四十歳になった三人を描いた『ズッコケ中年三人組』が出されたことで、毎年一歳ずつ年を重ねる形で五十歳まで続けられました。これも前代未聞のことでした。
 さて、那須正幹を語る上で外せないのは、彼が広島生まれで三歳の時に被爆をしていることで、原爆や戦争をテーマにした作品を何冊も出しています。どの作品もユニークなのですが、一冊あげるならば『絵で読む広島の原爆』(西村繁男・絵)でしょうか。アメリカやアジアの国では今でもあの戦争を終わらせるためには原爆投下が必要だったという考えが根強いわけですが、それに対抗し得る論理と迫力を備えた「絵本」だと思います。
 那須さんは島根農科大学で森林昆虫学を専攻したという、児童文学作家としては変わり種ですが、その後東京で二年間サラリーマン生活を送り、車のセールスをしていました。その時に歩いた東京の下町を舞台にしたのが、これも児童文学としては珍しい捕物帖で、岡っ引きの息子百太郎が主人公の「お江戸の百太郎」、百太郎の義弟銀太が活躍する「銀太捕物帖」の二シリーズがあり、大人のミステリー読者でも、結構楽しめると思います。今は山口県にお住まいですが、たまにお会いすると相変わらずの元気な広島弁、まだまだ活躍が期待できそうです。

◇藤田のぼる(ふじた のぼる)-profile-
1950年秋田県生まれ。児童文学評論家・作家。日本児童文学者協会副理事長。 聖学院大学他講師。著書に『児童文学への3つの質問』(てらいんく)、『少年少女の 名作案内 日本の文学』(共編、自由国民社)『「場所」から読み解く世界児童文学事典』 (共編著、原書房)など、創作作品に『山本先生新聞です』(岩崎書店)、『錨を上げて』(文 溪堂)『みんなの家出』(福音館書店、2014年度産経児童出版文化賞フジテレビ賞) などがある。小学校国語教科書編集委員、NHK学校放送企画委員なども務める。