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藤田のぼるの「童話作家のアイウエオ」【レ】令丈ヒロ子さん
『若おかみは小学生!』講談社青い鳥文庫 令丈ヒロ子/作 亜沙美/絵
 

◇藤田のぼる(ふじた のぼる)-profile-
1950年秋田県生まれ。児童文学評論家・作家。日本児童文学者協会副理事長。 聖学院大学他講師。著書に『児童文学への3つの質問』(てらいんく)、『少年少女の 名作案内 日本の文学』(共編、自由国民社)『「場所」から読み解く世界児童文学事典』 (共編著、原書房)など、創作作品に『山本先生新聞です』(岩崎書店)、『錨を上げて』(文 溪堂)『みんなの家出』(福音館書店、2014年度産経児童出版文化賞フジテレビ賞) などがある。小学校国語教科書編集委員、NHK学校放送企画委員なども務める。

【レ】令丈ヒロ子さん 『若おかみは小学生!』講談社青い鳥文庫 令丈ヒロ子/作 亜沙美/絵

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 二〇一八年の子どもの本の世界で話題となったのは、令丈ヒロ子作の人気シリーズ「若おかみは小学生!」のアニメ化でした。4月から9月までテレビ東京系で放送され、その終了と重ねるように劇場版が公開されました。僕がそれを知ったのは、5月の連休の上野公園での児童書フェスタの時で、講談社のブースに若おかみの大きなパネルが置かれたのを見てのことでした。早速放送を見てみたら、原作の雰囲気をとてもうまくアニメに仕上げていることに感心しました。
 「若おかみは小学生!」は、二〇〇三年から一三年まで二十巻で完結した青い鳥文庫のシリーズで、番外編や石崎洋司さんのところで紹介した「黒魔女さんが通る」とのコラボ作品も何冊か出ています。
 主人公は六年生のオッコこと関織子。両親を交通事故で亡くした彼女が、小さな温泉旅館・春の屋を営む祖母のもとにやってきたのは5月のことでした。傷心のおっこでしたが、思いがけないきっかけや出会いが重なり、「若おかみ」としての修行を始めることになります。こうしたシリーズは、「ちびまる子」のように、登場人物たちが年を取らないパターンも多いのですが、このシリーズでは最終巻でおっこが小学校の卒業式を迎えます。つまり「赤毛のアン」や「足長おじさん」のように、両親を亡くした少女が健気に成長していくという、児童文学としての鉄板の枠組みを持っているわけです。加えて、温泉街随一の大旅館の娘の真月というライバル役、春の屋に客としてやってくる作家の息子・美少年のあかねなど、少女小説としての役どころが見事にそろえられています。そして、このシリーズの魅力を支えている大きな要因が、「この世の人ではない」キャラクターで、男女一人ずつの〝ユーレイ〟が、小学生が若おかみを演じるというシチュエーションに、逆にリアリティを持たせています。
 さて、作者の令丈さんは大阪出身で、生家は旅館ではなく医院だったということで、『わたしはなんでも知っている』の主人公・お医者さんの娘のクス子は、ご本人の子ども時代が投影されている由です。また、二〇一一年に出された『パンプキン!』は「模擬爆弾の夏」というタイトルが示すように、太平洋戦争末期にアメリカ軍が原爆投下の「練習」として落とした爆弾(長崎型は、その形状からパンプキンと呼ばれていた)を題材にした作品で、舞台は大阪市田辺。ご自分が住んでいる大阪に、かつてそのような爆弾が落とされていたことを知り矢も楯もたまらず……という作品化の経緯は、どこかおっこの一途さを思わせます。いま次作が最も期待される書き手の一人です。

◇藤田のぼる(ふじた のぼる)-profile-
1950年秋田県生まれ。児童文学評論家・作家。日本児童文学者協会副理事長。 聖学院大学他講師。著書に『児童文学への3つの質問』(てらいんく)、『少年少女の 名作案内 日本の文学』(共編、自由国民社)『「場所」から読み解く世界児童文学事典』 (共編著、原書房)など、創作作品に『山本先生新聞です』(岩崎書店)、『錨を上げて』(文 溪堂)『みんなの家出』(福音館書店、2014年度産経児童出版文化賞フジテレビ賞) などがある。小学校国語教科書編集委員、NHK学校放送企画委員なども務める。