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『口で歩く』
『口で歩く』
『口で歩く』
藤田のぼるの「童話作家のアイウエオ」杉山亮
『空を飛んだポチ』講談社刊 杉山亮/作 おかべりか/絵
 

◇藤田のぼる(ふじた のぼる)-profile-
1950年秋田県生まれ。児童文学評論家・作家。日本児童文学者協会副理事長。 聖学院大学他講師。著書に『児童文学への3つの質問』(てらいんく)、『少年少女の 名作案内 日本の文学』(共編、自由国民社)『「場所」から読み解く世界児童文学事典』 (共編著、原書房)など、創作作品に『山本先生新聞です』(岩崎書店)、『錨を上げて』(文 溪堂)『みんなの家出』(福音館書店、2014年度産経児童出版文化賞フジテレビ賞) などがある。小学校国語教科書編集委員、NHK学校放送企画委員なども務める。

藤田のぼるの「童話作家のアイウエオ」杉山亮 さん 『空を飛んだポチ』講談社刊 杉山亮/作 おかべりか/絵

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 今回ご紹介する杉山亮(あきら)さんは、本の著者紹介でも、ウィキペディアなどでも「おもちゃ作家、児童書作家」となっているのですが、僕はおもちゃ作家としての杉山さんについてはそのお仕事を存じ上げません。ただ、これも杉山さんの紹介では必ず触れられていることですが、「元保父」というのがとてもユニークなところです。というのは、今は男性の保育士も珍しくありませんが、一九五四年生まれの杉山さんは、入学を許された保育専門学校でただ一人の男子学生、卒業後も保育者としての仕事を求めて離島に赴いたというぐらいですから、まさに草分け的存在です。保母出身の童話作家は、いぬいとみこ、中川李枝子を始めたくさんいると思いますが、保父出身というのは、杉山さんと絵本や歌で活躍中の中川ひろたかさんが双璧でしょうか。
 さて杉山さんの代表作は、なんといっても「ミルキー杉山のあなたも名探偵」シリーズでしょう。ミルキー杉山というのは、たまたま見た探偵映画に感激して志したという、あまりプロっぽくない探偵で、それでも様々な事件が持ち込まれます。どの巻にも二つから四つの事件が入っていて、まず「事件編」があって、その後に「解答編」が続きます。つまり、読者はまず事件編を読んで自分なりに推理し、解答編で答え合わせをする形になっているわけです。何かの知識がないと解けないということはほぼないので、子ども読者としてはまちがうことも含め、とても楽しめる仕掛けになっています。保育士である奥さんは、時に事件解決に一役買いますが、なぜか別居中で、二人の子どもの世話はミルキーがみているという設定も、ミルキーの人物としての魅力の一つといえるかもしれません。
 さて、僕が杉山作品のおもしろさを再発見したのは、『空を飛んだポチ』に始まる「杉山亮のものがたりライブ」のシリーズです。杉山さんは、夏休みなどに自作のお話を聞かせる「ものがたりライブ」を開催されていて、そこで語った話の二話から三話を一冊にまとめたものです。表題作の「空を飛んだポチ」のポチは犬ではなく鯉で、杉山さんが住む山梨県小淵沢はとても風が強い所で、風の力で発電できたのは良かったものの、強すぎて地域中が感電し、泉から逃げ出した鯉が杉山さんの家に飼われるようになったという、いわゆるホラ話の系列。こういう、どこまでが本当でどこからが作り話なのかがわからないような話というのが僕は大好きで、かねがね子どもの本の世界にほしいと思っていましたが、まさにこれはびったしでした。『バナ天パーティー』『走れカネイノチ!』の続編もさらに楽しめます。

◇藤田のぼる(ふじた のぼる)-profile-
1950年秋田県生まれ。児童文学評論家・作家。日本児童文学者協会副理事長。 聖学院大学他講師。著書に『児童文学への3つの質問』(てらいんく)、『少年少女の 名作案内 日本の文学』(共編、自由国民社)『「場所」から読み解く世界児童文学事典』 (共編著、原書房)など、創作作品に『山本先生新聞です』(岩崎書店)、『錨を上げて』(文 溪堂)『みんなの家出』(福音館書店、2014年度産経児童出版文化賞フジテレビ賞) などがある。小学校国語教科書編集委員、NHK学校放送企画委員なども務める。