ホーム>童話作家のアイウエオ [ウ]:上橋菜穂子

今回は「ウ」で始まる作家、やはり今この人を外すわけにはいけません。…
…むしろSF的な作品でしたが、「守り人」に重なる…
…も、大切な見どころだと思います。僕はこの…
藤田のぼるの「童話作家のアイウエオ」【ウ】上橋菜穂子さん
増補改訂版 「守り人」のすべて 守り人シリーズ完全ガイド 偕成社 上橋菜穂子/著 偕成社編集部/編 二木真希子/絵 佐竹美保/絵
 

◇藤田のぼる(ふじた のぼる)-profile-
1950年秋田県生まれ。児童文学評論家・作家。日本児童文学者協会副理事長。 聖学院大学他講師。著書に『児童文学への3つの質問』(てらいんく)、『少年少女の 名作案内 日本の文学』(共編、自由国民社)『「場所」から読み解く世界児童文学事典』 (共編著、原書房)など、創作作品に『山本先生新聞です』(岩崎書店)、『錨を上げて』(文 溪堂)『みんなの家出』(福音館書店、2014年度産経児童出版文化賞フジテレビ賞) などがある。小学校国語教科書編集委員、NHK学校放送企画委員なども務める。

<<

 今回は「ウ」で始まる作家、やはり今この人を外すわけにはいけません。「守り人」シリーズの作者、上橋菜穂子さんです。二〇一四年、日本の児童文学作家として初めて国際アンデルセン賞を受賞し(それまで画家や詩人のまど・みちおさんの受賞はありましたが)、話題となりましたが、昨年から綾瀬はるか主演でNHKでドラマ化が始まり、一気に注目度が高まりました。
 上橋さんのデビューは八九年、『精霊の木』という作品でした。舞台は人類が宇宙に進出した辺境の惑星ナイラ。この星にはロシュナールという先住民がいましたが、やがて絶滅。これについては、種としての弱体化だったと説明されていましたが、主人公の少女リシアは、政府によって仕組まれた「絶滅」であったこと、そして自身がロシュナールの血を受け継ぐ者であることを知っていきます。ファンタジーというよりむしろSF的な作品でしたが、「守り人」に重なるモチーフがいくつも見られます。そして、その背景には、上橋さんが、オーストラリアの先住民であるアボリジニを専門とする文化人類学の研究者であることが見てとれます。もちろん、「知識」としての側面もそうなのですが、異文化との出会いの中で人間がどのようにふるまうのかという、切実な問いが込められています。
 二作目の日本古代を舞台にしたファンタジー『月の森に、カミよ眠れ』(九一年) で日本児童文学者協会新人賞、そして九六年に満を持して、という感じで「守り人」シリーズの第一作『精霊の守り人』が出版されました。このシリーズの魅力は、バルサやチャグムを始めとする人物像はもちろんのこと、現実と精霊の世界が微妙に重なり合う独特の世界観、そして民族や文化を異にするいくつかの国々の関係性の複雑さというところも、大切な見どころだと思います。僕はこのシリーズがTVドラマ化されると聞き、こうした架空の国々の文化、風俗が、到底説得力を持った映像にはならないだろうと危惧していましたが、放映が始まって、その余りのリアリティに驚きました。昨年の12月に、以前に出たガイド本『「守り人」のすべて』の増補改訂版が出されたのですが、新たに上橋さんとTV化に当たって美術を担当した山口類児さんとの対談が掲載されています。この方が、文化人類学者で、上橋さんにも多大な影響を与えた山口昌男さんのご子息というのにもびっくりでしたが、新ヨゴ皇国を始めとする国々の風俗を、美術スタッフがどのように作り上げたかが誠に興味深く語られています。11月から最終のシーズン3 の放映も予定されており、本編と共に、このガイド本はお勧めです。

◇藤田のぼる(ふじた のぼる)-profile-
1950年秋田県生まれ。児童文学評論家・作家。日本児童文学者協会副理事長。 聖学院大学他講師。著書に『児童文学への3つの質問』(てらいんく)、『少年少女の 名作案内 日本の文学』(共編、自由国民社)『「場所」から読み解く世界児童文学事典』 (共編著、原書房)など、創作作品に『山本先生新聞です』(岩崎書店)、『錨を上げて』(文 溪堂)『みんなの家出』(福音館書店、2014年度産経児童出版文化賞フジテレビ賞) などがある。小学校国語教科書編集委員、NHK学校放送企画委員なども務める。