ホーム>世界の学校こぼれ話 第5回 空 間 その二

世界の学校こぼれ話 二宮 皓
AkiraNinomiya

【PROFILE】二宮 皓(にのみや・あきら)
1945年、鳥取県生まれ。広島大学教育学部卒。広島大学大学院教育学研究科博士課程中退。大学院在学中米国フルブライト留学(コネチカット大学)。文科省大臣官房調査課、広島大学教授、同大学留学生センター長・教育開発国際協力研究センター長・理事・副学長、放送大学理事・副学長、比治山大学学長などを歴任。専門は比較・国際教育学。著書に『世界の学校』(学事出版)、『21世紀の教育と学校』(協同出版)、『こんなに違う!世界の国語教科書』(監修、メディアファクトリー新書)、『こんなに厳しい!世界の校則』(監修、メディアファクトリー新書)など。テレビ『世界一受けたい授業』への出演なども。

このシリーズは、協同出版発行の月刊『教職課程』に2009 年9月号から2010年8月号までに連載した「放課後の学び舎」を採録したものです。

第5回

空 間 その二

教室の空間と学級規模

学校では教室という狭い空間に教師と生徒が同居することになっていますが、一体どの程度の「密度」で相部屋生活を強いられているか、という視点から空間を考えると、まさにそれが学級規模(クラスサイズ)の問題となります。かつて日本では「すし詰め学級」、韓国では「もやし学級」と言って、大きな規模の学級を表現・揶揄していました。1学級が50人、60人という状況であり、学校もプレハブ校舎を急造する対応を迫られていたことがありました。ベビーブーム時代のことであり、人口減少・少子化時代の今ではあまり想像できないでしょうね。「空き教室」や「学校の統廃合」などは今の時代の言葉ですね。


ギリシアの学校での日本語の授業風景


ドイツのギムナジウムの授業風景(火山の研究)
*ギムナジウム:7年制または9年制(10~19歳)の大学進学を前提とした中等教育機関

 

途上国の学校における学級規模は非常に大きく、60人を超えるクラスも珍しくありません。壁にも机にもほとんど何もなく。生徒の顔があるだけだ、といったケニアの学校を見学したことがあります。パキスタンの学校もそうでした。先般あるテレビでカンボジアの学校を映していましたが、そこも児童の顔があるだけの教室でした。文化という言葉がまったく当てはまらない「貧しさ」のなせる「教室空間」となっていました。


オマーンの授業風景


ケニアのマサイの学校の授業風景


フィンランドの学校の教育実習生の授業風景と教育実習生を指導している教師


ミャンマーの附属小学校の教室風景

 

クラスサイズは教育効果との関係で議論されることが多く、教師にとっては少人数の方が授業や生徒指導という観点では良いに決まっています。しかし少なければ「学力」という点での教育効果がどの程度あるのか、多くの調査研究がありますが、結論は一致していません。40人学級より、35人学級が良いに決まっている。しかし効果は不明。あえてアメリカのメタ分析による研究では、サイズによる教育効果は15人以下になって少し見え始め、5人になると明確に効果が見える、といいます。でも普通学級のサイズを5人の少人数にすることは非現実的です。国によってクラスサイズ政策はいろいろと工夫されていることもあり、他の授業ストラテジーとの組み合わせでクラスサイズを弾力的に工夫することが現実的でしょう。