ホーム>世界の学校こぼれ話 第6回 空 間 その三

世界の学校こぼれ話 二宮 皓
AkiraNinomiya

【PROFILE】二宮 皓(にのみや・あきら)
1945年、鳥取県生まれ。広島大学教育学部卒。広島大学大学院教育学研究科博士課程中退。大学院在学中米国フルブライト留学(コネチカット大学)。文科省大臣官房調査課、広島大学教授、同大学留学生センター長・教育開発国際協力研究センター長・理事・副学長、放送大学理事・副学長、比治山大学学長などを歴任。専門は比較・国際教育学。著書に『世界の学校』(学事出版)、『21世紀の教育と学校』(協同出版)、『こんなに違う!世界の国語教科書』(監修、メディアファクトリー新書)、『こんなに厳しい!世界の校則』(監修、メディアファクトリー新書)など。テレビ『世界一受けたい授業』への出演なども。

このシリーズは、協同出版発行の月刊『教職課程』に2009 年9月号から2010年8月号までに連載した「放課後の学び舎」を採録したものです。

第6回

空 間 その三

「職員室」の文化と機能

職員室は何のためにあるのでしょうか。考えたことはありますか。生徒にとっては緊張する場、叱られる場、親が呼び出される場、当番が呼ばれて業務を指示される場、といったものなのでしょうね。職員室で掃除をさせられた時を覚えていますか。その時先生はどんな態度をとりましたか。ひどい先生になると、生徒が先生の机の下を掃除する時に「机の上に足をあげる」先生がいませんでしたか。大きな声で説教するので先生全員に聞こえてばつが悪かったという思い出はありますか。学校における生徒や校長や先生、あるいは保護者などが出演するドラマでもありますね。先生も校長から注意を受けているかもしれませんね。先生も遅刻して教頭先生からお目玉をいただいているかもしれませんね。朝礼もありますね。教室に行くために多くの教材を抱えて飛び出していく先生もいますね。

さてこうした日本の学校の「職員室」は世界の学校にもあると思いますか。韓国と台湾を除くと、私が知る限りあまり世界の学校にはなかったと思います。先生の仕事場である指定席机が用意され、仕事道具が置かれており、教頭先生が前に陣取っているような「職員室」はなかったような印象です。

世界の学校には間違いなく「校長室」はあります。「事務室」も確かにありました。でも「職員室」はないようです。皆さんも海外の学校を訪問する時には是非とも「職質室」があるかどうかを確認してください。

世界の学校にあるのは、先生が休息するための小部屋ですね。自動販売機さえ置かれている「職員休憩室」があります。アメリカでは、禁煙と喫煙に分かれた「休憩室」もありました。フィンランドやスイスの学校、あるいはノルウェーの学校でも、先生はその休憩室でコーヒーを飲んだり、歓談したりして時間を過ごしています。毎朝先生の朝礼はありません。南アフリカの学校の職員室はソファーが並べてありましたね。先生宛てのメールボックスなどはどこでも設置されていましたので、連絡棚は職員室の共通物品・文化でしょうね。

 


ギリシアの学校の職員室


オマーンの職員室

 


ノルウェーの先生の休憩コーナー(職員室)


南アフリカの職員室

 

日本の学校の先生はどこで休息・休憩するのでしょうか。生徒から「逃れ」、生徒に邪魔されないで休息する場はありますか。日本の職員室は休息どころかさらなる仕事が出てくる場ですね。お茶は自由に飲めるのでしょうが、生徒や仕事から解放されて休息するという時間も場もないかもしれませんね。「職員室」が仕事場だからですね。

繰り返しますが世界の学校の職員室は、韓国と台湾を除くと、「休憩室・休息室」です。仕事から自由になる時間と場所ですね。

その他にも、世界の「学校空間」の文化にはいろいろなことがあります。たとえば、「教室」は誰のものか。日本では生徒が占有する部屋ですが、アメリカやイギリスでは先生の「部屋」ですね。生徒はその先生の授業をとるために、その先生が占有する「教室」に通ってくることになります。先生が教室に来るのではありません。生徒が移動する文化になっています。

皆さんも「学校空間」がもつ様々な意味や文化を想像し、勉強してみてください。いろいろな学校のもつ「物」が私たちに多くのことを語ってくれていると思います。そこにも「文化」があると思います。