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教育行政・学校経営の最新情報「教職研修資料」【発行】教育開発研究所

教職研修資料2018/10/1 No.580発行  ※無断転載・加工禁止  【発行】教育開発研究所

教育行政のポイント

“遠隔教育”の本格的推進
 菱村 幸彦

 

9月14日、文部科学省は「遠隔教育の推進に向けた施策方針」(以下「施策方針」)を公表した。

これは省内のタスクフォース(文科副大臣を主査とし関係局長・課長等で構成)が、遠隔教育の推進について検討を行い、具体的方策を取りまとめたものである。

 

●規制改革実施計画の決定をふまえて

遠隔教育とは、遠隔システムを効果的に活用した同時双方向型で行う教育をいう。ICTの発達により、遠隔システムを活用すれば、小規模校でも学校同士をつなぐ合同授業の実施や、外部人材の活用、幅広い科目開設など、学習の幅を広げることができる。

昨年、政府の規制改革実施計画(平成29年6月9日閣議決定)の中で遠隔教育が取り上げられ、「現行制度においても実施可能であるが、教育の質の一層の向上の観点から、その本格的推進について、幅広い視点から施策方針の取りまとめを行い、学校関係者等への周知その他必要な方策を講ずる」ことが定められた。

今回の施策方針は、この決定をふまえたものである。

 

●遠隔授業の3つの類型

施策方針は、遠隔システムを活用する遠隔授業として、次の3つの類型を示している。

第1は、合同授業型。これは複数の遠隔の教室を ICTでつないだ授業である。他の学校との合同授業により、多様な意見や考えに触れたり、協働して学習に取り組んだりする機会の充実が可能となる。

第2は、教師支援型。これは専門家等が遠隔の場所から協働して行う授業である。外国語指導助手や専門家等の活用、博物館や美術館等との連携など、遠隔にある教育資源を効果的に取り入れることにより、学習活動の幅を広げることが可能となる。

また、免許外教科担任が授業をせざるをえない場合、遠隔システムを活用して、免許を有する他校の優れた教員が授業に参画することにより、授業の質を高めることができる。

第3は、教科・科目充実型。高等学校や特別支援学校高等部については、平成27年の学校教育法施行規則の改正によって、遠隔教育による単位認定が制度化された。

この制度により先進的な内容の学校設定科目や相当免許状を有する教師が少ない科目の開設、小規模校等における幅広い選択科目の開設など、生徒の多様な科目選択を可能とし、学習機会の充実を図ることができる。

 

●不登校と病気療養に対する遠隔授業

このほかに、個々の児童生徒への対応策がある。不登校や病気療養などで、通学して教育を受けることが困難な児童生徒に対し、自宅や病院等における遠隔教育の実施により、学習機会の確保を図ることができる。

不登校については、自宅でICT等を活用した学習活動を行った場合、一定要件の下に指導要録上出席の取扱いとする措置がとられているが、病気療養については、このような措置がとられていない。施策方針は、不登校の出席扱いの制度を一層活用するとともに、病気療養について出席扱いができる制度改正を行う必要があるとしている。

遠隔教育を推進するにあたっては、ICTの環境整備、遠隔システム活用の教員研修、機器等のトラブル対策などクリアすべき課題が多い。遠隔教育を本格的に推進するためには、文科省および教育委員会の積極的支援が欠かせない。

 

(ひしむら・ゆきひこ=国立教育政策研究所名誉所員)

 

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