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教育行政・学校経営の最新情報「教職研修資料」【発行】教育開発研究所

教職研修資料2019/6/3 No.596発行  ※無断転載・加工禁止  【発行】教育開発研究所

教育行政のポイント

文科省が示した“虐待対応マニュアル”
 菱村 幸彦

 

さる5月9日、文部科学省は、「学校・教育委員会等向け虐待対応の手引き」(以下「手引」)を公表した。手引は、本年1月に千葉県野田市で起きた両親による女児虐待死亡事件をふまえ、学校や教育委員会の関係者向けに、虐待と疑われる事案についての具体的な対応方法を示している。

以下に手引の重要ポイントについて紹介する。

 

●子どもの異変を見逃さない

第1は、教職員の責務。児童虐待防止法は、学校や教職員の責務について、

(1)虐待の早期発見に努めること(5条1項)

(2)虐待を受けたと思われる子供について市町村の虐待対応担当課や児童相談所(以下「児童相談所等」)へ通告すること(6条)

(3)虐待の予防・防止や虐待を受けた子供の支援に関し、関係機関への協力を行うこと(5条2項)

(4)虐待防止のための子供への教育に努めること(5条3項)

を定めている。

教職員は虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、虐待の早期発見に努めなければならない。そのためには、虐待はどこにでも起こり得るという認識に立ち、虐待の可能性を示唆する子供や保護者、状況をめぐる異変や違和感を見逃さないことが重要である。

 

●確証がなくても通告する

第2は、児童虐待の通告。虐待の事実が必ずしも明らかでなくても、一般の人の目から見れば主観的に虐待が疑われる場合は通告義務が生じる。 教職員は通告に当たって、

(1)確証がなくても通告すること(誤りであったとしても責任は問われない)

(2)虐待の有無を判断するのは児童相談所等の専門機関であること

(3)保護者との関係よりも子供の安全を優先すること

(4)通告は守秘義務違反に当たらないこと

等に留意する。

通告方法は、口頭(電話)で構わないが、正確に伝えたいときは文書で通告する。通告したら、通告先、伝達内容、通告先から言われたことなどを記録しておく。また、通告後速やかに教育委員会に連絡することが必要である。

 

●保護者にはチームで対応する

第3は、保護者への対応。通告後、保護者が学校に来校し、教職員に何らかの要求や相談をしてくることがある。その場合は、学校はチームとして対応することが不可欠である。

子供を一時保護した時点で、児童相談所から保護者に対し、子供を一時保護している旨の連絡を入れることとなっているが、保護者が学校に押しかけてくることも考えられる。その場合、「一時保護は児童相談所の判断であり、学校が決定したものではない」など、一時保護は専門機関の権限や責任で行われたことを明確に伝えることが重要である。保護者から威圧的な要求や暴力の行使等が予想される場合は、教育委員会や警察等に連絡する。

また、保護者から虐待を認知するに至った経緯や通告元を教えるよう求められても、学校や教育委員会は保護者に伝えてはならない。親権を理由に保護者が威圧的、拒絶的な態度をとる場合でも、学校は子供の命を守り抜く姿勢で毅然とした対応をすることが重要である。

学校や教育委員会に対して保護者が不満を持って、子供を学校に通学させない場合は、学齢児童生徒であれば、校長は学校教育法施行令20条に基づき、教育委員会に通知すること、教育委員会は学校教育法施行令21条に基づく出席の督促などを適正に行うことが必要である。

 

(ひしむら・ゆきひこ=国立教育政策研究所名誉所員)

 

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