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教育行政・学校経営の最新情報「教職研修資料」【発行】教育開発研究所

教職研修資料2019/8/1 No.600発行  ※無断転載・加工禁止  【発行】教育開発研究所

教育行政のポイント

法律で定めた“パワハラ防止”
 菱村 幸彦

 

セクシュアル・ハラスメントの防止は、男女雇用機会均等法で定めているが、パワーハラスメント(以下「パワハラ」)については、これまで法律の規定がなかった。それが、このたびパワハラについても法律の規定が整備された。

その法律は、雇用施策推進法(正式には「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」)である。

本年5月に同法が改正され、パワハラについて、(1)雇用管理上の措置、(2)国・事業主・労働者の責務、(3)紛争解決の特例等が定められた。改正法は、紛争解決の特例を除いて、公立学校の教職員にも適用される。

 

●パワハラの法律上の定義

労働施策推進法30条の2第1項は、「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」と規定している。

この条文が定めるのは、次の2点である。

第1は、法律でパワハラを定義したことである。同条は、パワハラについて、(1)職場において行われる、(2)優越的な関係を背景とした言動で、(3)業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの――の3要件に該当する言動と定めている。

ここで「職場」とは、職場内、勤務時間内はもちろん、職場外、勤務時間外に行われたものも含む。「優越的な関係を背景とした言動」とは、上司の職務上の地位や権限を利用した言動、あるいは専門知識が豊富で、経験が長いなど職場において相対的に優位な立場を利用した言動である。「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは、感情的、高圧的、攻撃的に行われた場合など、社会通念上許容される限度を超える言動である。業務上の命令や指導に対して、仮に受け手が不快と感じても、業務の適正な範囲内で行われた言動はパワハラに該当しない。

 

●相談の対応と不利益の禁止

第2は、パワハラ防止の措置である。同法30条の2第1項は、事業主(公立学校については教育委員会)は、労働者からのパワハラの相談に応じ、パワハラ防止に適切に対応する措置を講じなければならないと規定している。

パワハラは、業務に関連して発生する場合が多く、加害者が上司、被害者が部下というケースがほとんどである。部下としては、パワハラを受けていると思っても、上司に対してパワハラであることを伝えることは難しい。

そこで、パワハラを受けていると感じたときは、一人で悩んだり、我慢したりすることなく、早めに相談することができるよう、事業主に相談窓口を整備し、パワハラの防止に適切に対応する措置の整備を義務付けた。また、同条第2項は、事業主は、労働者がパワハラの相談を行ったこと、または相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならないと定めている。

このほか、事業主は、パワハラについて研修を実施すること、自らもパワハラ問題に関心と理解を深め、言動に注意するよう努めること等が定められている(30条の3)。

なお、改正法の施行日は1年以内に政令で定めることとなっているが、政令は現時点では未制定である。

 

(ひしむら・ゆきひこ=国立教育政策研究所名誉所員)

 

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