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教育行政・学校経営の最新情報「教職研修資料」【発行】教育開発研究所

教職研修資料2019/11/1 No.606発行  ※無断転載・加工禁止  【発行】教育開発研究所

教育行政のポイント

小学校における“教科担任制”
 菱村 幸彦

 

さる9月4日、中央教育審議会初等中等教育分科会の特別部会は、目下審議中の「新しい時代の初等中等教育の在り方」について、「これまでの審議を踏まえた論点整理(案)」を公表した。

論点整理(案)は、諮問にある多様な項目を取り上げているが、その中の一つとして、「義務教育9年間を見通した児童生徒の発達の段階に応じた学級担任制と教科担任制の在り方」について、小学校における教科担任制の導入の方向性を示している。

 

●教科担任制の実施状況等

まず、現状から見ておこう。文部科学省の調査によれば、平成30年度計画における小学校の教科担任制で、高学年(第5・6学年)を中心に実施率の高いのは、まず「音楽」が5年54.0%、6年55.6%、「理科」が5年45.1%、6年47.8%である。次いで、「家庭」が5年33.9%、6年35.7%。「図工」が5年20.4%、6年21.0%となっている。指導の難しい「外国語活動」は5年18.3%、6年19.3%にとどまる。最も低いのは「国語」で、5年3.4%、6年3.5%である(ここでいう教科担任制とは、専科教員のほか学級担任が得意分野で他のクラスの授業を行う場合やチーム・ティーチングなど多様な形態を含む)。

新学習指導要領が全面実施となる令和2年度からは、英語の教科化やプログラミング教育の導入など専門的な指導が求められるから、小学校における教科担任の必要性はより高まっている。

 

では、教科担任制のメリットとデメリットには、どのようなものがあるか。メリットとしては、(1)教員が担当する教科が絞られるため授業準備の負担が軽減される、(2)一つの教科にかけられる準備時間が増えるため教員の専門性や授業の質の向上が見込める、(3)教員一人当たりの持ちコマ数の改善につながり教員の業務負担が改善される――などが考えられる。

一方、デメリットとしては、(1)教科ごとに異なる教員が授業するため教科の横断的な授業がしにくくなる、(2)学級担任と児童の接触が減少し、いじめなど子どもの異変に気づくのが遅れる、(3)小規模校では教員数が少なく教科担任制への対応が難しい――などが挙げられる。

 

●本格導入の方向性を示す

論点整理(案)は、議論の中間的な整理なので、「検討すべきではないか」「どう考えるか」「どうあるべきか」など疑問形で記述されているが、要約すれば、次の方向性を示している。

(1)義務教育9年間を見通した指導体制の整備に向けて、小学校高学年からの教科担任制の本格的導入を検討すべきである。

(2)小学校の教科担任制の導入に当たり、教員定数、教員養成・免許制度、採用・研修などについて、義務標準法や教育職員免許法等の改正が必要である。

(3)小学校の高学年で、専門性を有する教師が直接教えられる仕組みを作る観点から、小学校間の連携や小・中学校の連携を図る必要がある。

(4)小学校における教科担任制の効果をより発揮するための方策を検討すべきである。

今後のスケジュールは、本年末頃までに「論点とりまとめ」を行い、来年1月以降、特別部会等でさらに審議を続けるという。

中教審の結論に先立ち、文部科学省は、来年度概算要求で、小学校高学年において教科担任制に先行的に取り組む学校への支援策として、2,090人分の定数増を要求している。このほか、今年度に引き続き、小学校の英語専科教員1,000人増等を計上している。

 

(ひしむら・ゆきひこ=国立教育政策研究所名誉所員)

 

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