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教育行政・学校経営の最新情報「教職研修資料」【発行】教育開発研究所

教職研修資料2020/1/6 No.610発行  ※無断転載・加工禁止  【発行】教育開発研究所

教育行政のポイント

PISA2018で“読解力低下”
 菱村 幸彦

 

昨年末、OECDが2018年に実施したPISA(国際学習到達度調査)の結果が公表された。全国紙は、「日本の15歳『読解力』15位に後退」(日経)、「『読解力』15位に急降下」(読売)などと、読解力の低下を大きく報道している。

 

●数学と科学はトップクラスだが

周知のように、PISAは、義務教育修了段階の15歳の生徒を対象に、2000年から3年ごとに、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野で実施されている。PISA2018には、世界79ヵ国・地域の約60万人が参加し、日本では、無作為抽出で選ばれた高校183校の第1学年の生徒約6,100人が調査対象となった。

PISA2018の日本の結果は、次のとおりである。

(1)数学的リテラシーは、OECD37ヵ国中第1位、参加79ヵ国・地域中第6位。

(2)科学的リテラシーは、OECD37ヵ国中第2位、参加79ヵ国・地域中第5位。

(3)読解力は、OECD37ヵ国中第11位、参加79ヵ国・地域中第15位。

数学と科学は、引き続き世界トップレベルにある。OECDは、調査開始以降の長期トレンドについて、日本は安定的に世界トップレベルを維持していると評価している。

しかし、読解力は、OECD平均より高得点のグループに位置するものの、前回(6位)に比べて得点・順位ともに統計的に有意に低下している。

読解力の低下について、国立情報学研究所の新井紀子教授が、「子どもたちは教科書が正確に読めていない」と警鐘を鳴らしているが、PISAの今回の結果からみて、読解力の向上は、我が国の学校教育の重要課題として、真剣に受け止めねばならない。

OECDは、PISAで測定する読解力について、(1)情報を探し出す、(2)理解する、(3)評価し、熟考する、の3つの能力を挙げている。

日本の生徒の正答率が低かったのは、テキストから情報を探し出す問題やテキストの質と信ぴょう性を評価する問題である。また、読解力の自由記述形式の問題について、自分の考えを他者に伝わるように根拠を示して説明することに課題があることが明らかになっている。

もう一つ気になるのは、低得点層が増加していることだ。PISAでは習熟度レベルを得点により大きく6段階に分けているが、最下位のレベル1以下の生徒が15%を超えている。しかも、その割合が過去3回の調査ごとに増えている。低得点層のレベルアップは喫緊の課題だ。

 

●ICT環境整備の遅れも一因か

前回のPISA調査からコンピュータ使用型調査が導入され、今回の調査では全小問245題のうち約7割の173問がコンピュータによる出題となっている。文科省は、読解力低下の一因として、日本の生徒にとって、コンピュータ画面上での長文読解に不慣れがあったとみている。

PISAで行ったICTの活用調査をみると、日本の学校は授業(国語、数学、理科)でデジタル機器を利用している時間が少ない。授業で「利用しない」と答えた日本の生徒は、国語で83%(OECD平均は48%)、数学で89%(OECD54%)、理科で76%(OECD44%)とOECD加盟国中最下位となっている。これは我が国の学校におけるICT環境整備の遅れに原因がある。

この点、今年度の補正予算案に、1人1台の端末整備と全校のネットワーク整備をめざす「GIGAスクール構想」の実現に向けた経費(2,318億円)が計上されているのは朗報だ。ICT環境の整備に期待したい。

 

(ひしむら・ゆきひこ=国立教育政策研究所名誉所員)

 

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